~ HarFor Breaking Interview#02 在トンガ日本国大使館 「草の根・ 人間の安全保障無償資金協力」 外部委嘱員 今井 朱子さん ~
HarForがオフィスを構える高知で、解決できる課題、実現できる未来は一体なんなのか。高知を一緒に盛り上げていく素敵な方々からお話を伺うインタビューシリーズ、「HarFor Breaking Interview」。HarForが大切にする「つながり」をテーマに、ゲストのご縁をつなげていくリレー企画です。
前回のゲスト、高知県商工労働部・企業誘致課の安田尊宣さんがご紹介してくれた第二回目のゲストは、高知県庁の職員から南半球の小さな島国・トンガ王国に渡り、日本国大使館で働かれている今井朱子(いまいあやこ)さんです!よろしくお願いいたします。
(今井さん)ー緊張しますね(笑)よろしくお願いします!
~今井 朱子さんProfile~
高知市出身。2016年に高知県庁に入庁。
観光振興部おもてなし課を経て、2019年にスポーツ課へ移り、
東京2020オリンピック聖火リレー高知県実行委員会 を務める。
2021年に退庁後、株式会社やまとごころ高知事業部(現株式会社とさごころ)に半年間在籍したのち、
2022年から在トンガ日本国大使館 「草の根・ 人間の安全保障無償資金協力」 外部委嘱員に。
(インタビュアー)まず、見ただけですごくインパクトがあって気になる肩書ですが…(笑)トンガはどんな国なんですか?
(今井さん)全土で10万人くらいで、日本の地方の市町村くらいの小さな国です。都市開発も進んでいない、自然がとてもきれいで、日本に比べて気候も一定なとても過ごしやすい国です。ちなみに南半球なので、日本と季節の進み方は冬・秋・夏・春、、と真逆です。
▲トンガはオーストラリアやニュージーランドの近く、ポリネシアに位置し、171の島からなる南太平洋最後の王国。
美しい自然が広がり、環境保護や持続可能な開発にも積極的に取り組んでいる。
(インタビュアー)なぜトンガで働くことになったのか、教えてほしいです。
(今井さん)高知市出身で、大学進学で東京へ上京しました。そのときから外国の文化に興味があったので、長期休みは海外にバックパッカーとして旅行に行ったりしていました。元々、高知県で生まれたのもあって「東京コンプレックス」がすごくあったんです。色んなものが集まる東京で、東京出身の人と対等に渡り合うには海外に行くしかない、東京の人が海外を目指すのと高知の人が海外を目指すハンデは一緒だと思う気持ちがありました。
でももちろん、外国の文化が単純に大好きだからというのもありましたよ!おしゃれじゃないですか。
(インタビュアー)今日もお召し物がとっても素敵で…パリジェンヌ感がありますよね。
(今井さん)パリ好きです!もう10回以上行きました。美しいものが好きで。アルバイトをしてお金が貯まったら、パリなどの海外の美しい場所に行く、という生活を大学卒業後もしばらく続けていました。でもこのままじゃまずいと思って、就職をすることにしたんです。就活をする中ですごく興味を惹かれ、受けたのが観光振興部の「おもてなし課」でした。
▲緊張を感じさせず自然体で語ってくださる今井さん。
(インタビュアー)そこから県庁に入られたんですね。
(今井さん)はい。おもてなし課では海外から高知にやってきたクルーズ客船の乗客の受け入れのお仕事を3年間担当しました。その中で自分の次のキャリアについて考えていた時に紹介してもらったのが「トンガのラグビー代表の受け入れ」のサポートのお仕事でした。大変な仕事でしたが、本当に自分がやりたいことだと感じられて、兎に角楽しかったです!そして無事、トンガのラグビー代表の受け入れが正式に決まり、今度はその仕事を継続するためにおもてなし課を辞め、翌年から今度はスポーツ課で働き始めました。
(インタビュアー)すごい行動力ですね!
(今井さん)どうしてもその仕事をしたくて(笑)もちろんすごく大変でしたけどね。高知にやって来る当日も台風に見舞われたりして、ヒヤヒヤして寝ることもできませんでした。でも、そんな状況すらもすごく楽しかったです。そのあと、オリンピックの聖火リレーの準備も担当し、スポーツ課でも約3年ほど働かさせていただきました。
(インタビュアー)そこから今度は民間の会社員へとキャリアチェンジをされるんですね。
(今井さん)でも実はその前に、もう在トンガ日本国大使館職員の仕事に受かっていたんです!航空券も買っていたし、着々と準備を進めていたのですが、コロナのパンデミックがあって国境は封鎖。トンガには入国できなくなり、決まっていた仕事は無期限の延期となりました。
そんなときに出会ったのが民間のインバウンドコンサルティングの会社です。県庁での仕事の経験も生かし、海外の旅行雑誌やインターネットなどで高知県を海外にPRする仕事をしました。公務員時代とはまた違う学びもあり、面白かったですね。
でも働き始めて半年ぐらいしか経たない頃にトンガからまた連絡がきて。「国境が開いたので、トンガに来てください!」と。とても心苦しかったんですが、会社に正直にそのことを伝えると、みんな名残惜しみながらも背中をしっかりと押してくれました。本当にありがたかったです。
▲大変なお仕事でも楽しそうに取り組まれた姿が伺えたのが印象的でした!
(インタビュアー)そこからいきなりトンガに行くことになったんですか?
(今井さん)そうです!そこから2か月後にはもう行かなくてはならず、、行ったらすぐに仕事が始まりました!大使館でのお仕事が決まってから、2年後のことでしたね。
(インタビュアー)大使館ではどんなお仕事をされているんですか?
(今井さん)「草の根・人間安全保障無償資金協力」といって、トンガの日本大使館とトンガ内の村などの小さなコミュニティが直接繋がる、最大2000万円の資金支援事業を担当しています。例えば教育機関への資金援助や、用水路の整備支援などですね。トンガでは市町村からのそういった資金支援などは何もないので、住民たちが全部自分たちで何とかするしかありません。なので、ほとんどの場合はお金がなくて整備できていないままの状態になっています。そういった問題改善のため、日本政府は積極的に支援を行っています。
(インタビュアー)日本の支援活動は昔から盛んに行われているんですか?
(今井さん)そうですね。1990年代から、今まで300件以上の実績があります。他の国と比べて、1件当たりの金額的にも日本が一番支援しているんじゃないでしょうか。支援自体のクオリティも高く、支援で使われた日本円は全てその地域に入るような仕組みになっているので、支援が終わった後は自立して運営できるようになります。なので、日本への信頼感というのはすごく大きいと思います。
▲署名式の様子(右の写真中央左:トンガ財務大臣、中央右:稲垣大使)
(インタビュアー)仕事をする中で大変な部分はありますか?
(今井さん)支援が始まっても、やはり最初から全てが改善されるわけではありません。最終的な自立までには住民自身の積み立ても必要だったりします。そんなとき、改善していくためとはいえ、やはり最初は抵抗があるんですよね。で、結局積み立てができなくていつまでたっても改善ができなくなってしまうケースもあります。自分たちのやっていることを信じてもらえるかどうかという、うまく歯車が回り出すまでの部分が大変です。
こういった仕事を、全部1人で対応しています。
(インタビュアー)え?!1人で?!
(今井さん)はい(笑)大使館職員も日本人職員が10人くらい、現地の職員さんも10人くらいと少ないですしね。最初の面談・ヒアリングから、村の視察、基本的に全て1人で対応します!公用語はトンガ語と英語の2つがあるのですが、私は英語しか喋れないので、相手が英語を喋れないという場合は、英語が喋れる人を一緒に連れてきてもらいます(笑)
(インタビュアー)すごいですね。女性1人で働くのは大変ではありませんか?
(今井さん)それはあまりないですね。治安もいいので、女性1人で仕事をしていても、特に身の危険や不安を感じることもありません。それに、トンガは女性活躍が進んでいる国なんです!支援の相談をしてくるような役職についた人は男性が多いですが、実際にパソコンを扱って申請の手続きをするのはほとんど女性です。トンガ政府の職員も女性の比率がすごく高いですし、学校の先生や事務職の仕事も特に女性が多いですね。学力も圧倒的に女性の方が高くて、1番の進学校は生徒の男女比率が3:7となっています。
(インタビュアー)そうなんですね!それは少し意外でした。
(今井さん)高知のはちきんに似ているのですが、トンガの女性は兎に角グイグイ行くタイプが多いんです!ただ、女性が国内に残ってグイグイ前に出て働くので、男性は国外に出稼ぎに行っていなくなります。出生率が高いので普通だったら人口が増えるはずなのですが、みんな移民として18歳を過ぎると出ていってしまい、毎年0.2%くらいの人口が減少しています。
▲給水施設の寄贈式にて、一番書類仕事を頑張った女性と工事業者さんとの一枚。
(インタビュアー)働き盛りの人がいなくなる、というのは高知と一緒ですね。国自体は何か対策をとっているんでしょうか?
(今井さん)トンガではまだ外貨を稼ぐ方が優先されていて、むしろ海外に出稼ぎに行くことが推奨されているんです。海外に行く仕事の方が、国内の仕事よりよっぽど稼げる上、トンガに外貨として入ってきますから。年間で出稼ぎに出ることができる人数が定められてはいますが、人口流出の根本対策にはなっていません。
将来性のある人たちは海外でいい職につくと帰ってこないので、国外に行けないような人たちが残って頑張るしかないという状況です。その中でも、一部志のある人が、この国を良くしようといって取り組んでいます。そういった課題は、本当に高知の田舎と同じです。
(インタビュアー)高知と似ているところもたくさんあるんですね。そんなトンガに似ている故郷・高知には、どんな姿になっていってほしいですか?
(今井さん)東京を目指さないでほしいです。トンガでの暮らしを通して、みんなで助け合ってみんなで一つを守るみたいな部分の大切さを学びましたが、そういった人の感情を尊重する素敵な文化が高知にもあると思います。そんな高知の「高知らしさ」を追求すればいいのではないでしょうか。その人に合った働き方、自分のやりたいこともできるバランスが取れた生活ができれば、みんな幸せなのではないかと思います。そのためにも、フルタイム以外の働き方の選択肢が増えたらいいなと思います。
▲高知らしい姿を目指してほしいという思いが伝わりました。
(インタビュアー)実はHarForも、働き方という部分で社員のありたい姿を実現できるような、フルタイム以外の選択肢が色々用意されています!子供さんがいる女性社員もたくさんいて、時短勤務やフレックス勤務など、有効に活用しています。
(今井さん)いいですね~!そんな働き方が、もちろん女性だけでなく男性にも、高知全域でもっと増えればいいなと思います。
(インタビュアー)まさに今高知で求められている働き方ですね。自分らしく働きたいと頑張っている高知のみなさんに、アドバイスはあるでしょうか?
(今井さん)「やってみたいかも!」と、少しでも情熱を感じたことはやった方がいいです。不安はあるかもしれませんが、飛び込んでみると、次はまた新しい世界がどんどん広がっていきます!
あと、やりたいことや叶えたいことは、恥ずかしがらずに積極的に人に言っていきましょう。誰かがそれを聞きつけて、チャンスや繋がりをどんどん紹介してくれるようになります。私もトンガに行ってから、「私トンガが大好きなんです!」と色んな人に話していたら、色んな人がサポートしてくれるようになりました(笑)
▲挑戦すること・発言することで素敵な人たちと出会えたという。
(インタビュアー)実際に夢を叶えている今井さんからの言葉というのもあって、胸に刺さります。ちなみに、今井さんの次なる夢はずばり?
(今井さん)実は、もう少しトンガにいたいなと思っています。ラグビー協会のサポートや、今もやっている地域のコミュニティのサポートの仕事に、もっとフレキシブルに携わっていきたいなと思っています。
(インタビュアー)まだまだトンガでやりたいこと、続けたいことが盛りだくさんですね(笑)
(今井さん)トンガが楽しすぎて、ずっといたいです(笑)
今回の取材内容以外にも、色んなお話をお聞きできました。そちらの楽しい取材の様子も、番外編としてHarForの公式Xで順次公開しますのでぜひチェックしてみてくださいね!
今井さん、取材へのご協力本当にありがとうございました!
次回、今井さんはどんなゲストにバトンを渡してくれるのでしょうか。お楽しみに!
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(インタビュー・写真:HarFor広報担当)